彼女は、とにかく、自分の生皮を剥ぐのが大好きな子供だった。
自分の子供が傷だらけになっているというのに、親は、よく安心していられたものだ。
(彼女の両親は、何が起こっても驚かないという不思議な人種なのだ。
多分、明日、彼女が
「ごめん! さっきヒト殺しちゃってさ…。」
と、電話をしたところで、
「じゃ、早く自首しなさい。 弁護士費用はウチで出してあげる。」
と、落ち着いて前向きな意見を述べるような人たちなのだ。
何やらそういう重厚感がある。 …っつーか、ちょっと変。)
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今、流行のリストカットとか、そういうものではない。
目的は、自殺でも、自殺未遂で誰かに助けを求めることでもない。
ただ、”美しいものを見たい”という芸術的欲求による彼女の自傷行為は、
なるべく他人に迷惑をかけないよう、夜の入浴前に行われていた。
剃刀で スッ と、薄く、皮を剥ぐ。
そうすると、一瞬、色素沈着のない、真っ白な皮膚が現れ、
そこに切れた毛細血管から ぷくぷくっ と、幾つもの赤い球体が覗いて膨らむ。
血の高まり同士がくっつきあって流れてしまうまでの、その赤と白のコントラストが彼女は好きだった。
後は、風呂の熱い湯で血止めをして終わりだ。
瘡蓋を剥ぐのも、同じような理由で好きだった。
だが新しく皮を削いだ時ほどの、美しい色の対比は望むべくもなかった。
というわけで、彼女の脛には沢山の傷があった。
勿論、靴下で隠れる部分にしか刃を立てたりはしなかったけれども。
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さて現在の彼女はというと、当然、昔ほどの芸術家ではなくなっている。
でも今でもちょっとだけ、
指のささくれをむいてみたり、唇の荒れた部分を引っ張って剥がしてみたり…
毛細管の真っ赤な血が好きなことには変わりがないようだ。
…
趣味の献血で見るドス黒い静脈血だけは、相変わらず好きになれないようだが♪
ではでは、
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